公認心理師・水澤靖子 / みらいの樹 series part6
前回の記事(part5)では、わたしたち大人がつい「やる気や態度の問題」と捉えがちな子どもの行動(じっと座れない、手先が不器用など)が、実は「身体感覚」の未発達からきている、というお話をしました。
体育の時間や、日々の泥臭い外遊びを通して身体をコントロールできるようになることが、子どもの生活や学習のクオリティを劇的に引き上げます。
では、ステップ②で育てた「身体感覚」は、ステップ③の「非認知能力(しなやかな樹心)」へと、一体どのようにして結びついていくのでしょうか?
「体を動かすこと」と「心が強くなること」のあいだにある、脳と心のメカニズム。 今回は、一見つながりのなさそうなこの2つが、子どものなかで劇的に結びつく「3つの瞬間」について、さらに一歩踏み込んでお話しします。
脳の省エネが「集中力・注意力」を生み出す
「うちの子、宿題をしているときにすぐキョロキョロして集中できないんです」というお悩みをよくうかがいます。
ここで少し想像してみてほしいのです。もし、みなさんが「今にも崩れそうなグラグラの一本橋」の上に立たされていたとしたら、そこで目の前の難しい本をじっくり読むことができるでしょうか?……きっと無理ですよね。落ちないようにバランスを取るだけで、脳も体も必死になってしまうはずです。
実は、身体感覚(特に体幹や、自分の体の位置を把握する感覚)が育っていないお子さんは、教室の椅子に座っているだけで、この「一本橋の上にいる」のと同じくらい、脳のエネルギーを「姿勢を保つこと」に使い果たしています。
座位を保つだけでエネルギーが残っていないから、お話を聞いたり、手元に注意を向けたりする余裕がなくなってしまうのです。
しかし、わたしのサポートで行っているコグトレやビジョントレーニング、そして教員時代に実践してきた「がんばり体操」などで身体感覚を引き上げてあげると、子どもは「無意識」に、まっすぐラクに座れるようになります。
姿勢を保つための脳のエネルギーが「ゼロ」で済むようになる。 つまり、脳に大きな余裕(省エネ状態)が生まれるのです。この余った脳の体力こそが、目の前の物事に深く入り込む「集中力」や「注意力」というすべての物事につながる大事なパワーを安定させます。さらに、これらのパワーが認知能力を格段に上げ、非認知能力のさらなる獲得にも効果を示します。
💡4ステップでわかる!姿勢と集中力のメカニズム
身体感覚が未発達だと、座るだけで「グラグラの一本橋」状態。姿勢を保つだけで脳がヘトヘトに。
コグトレ、ビジョントレーニング、縄跳びなどで、子どもの体幹と身体感覚を底上げ。
体が整うと「無意識」にラクに座れるようになり、脳に大きな余裕が生まれる。
深い「集中力・注意力」に直結。頭(認知能力)と心(非認知能力)の成長をガッシリと支え始める。
身体の限界を乗り越えた経験が「自己コントロール力」になる
心の踏ん張りは
精神論では育たない
⇩
「感情のコントロール力」
や「辛抱する力」は
【身体の踏ん張り】から
身体の「きつい」を
乗り越える瞬間
⇩
「自分の身体を
コントロールして
乗り越えた体験」が
脳の前頭葉を猛烈に刺激
体での成功体験が
「生きる力」へ
⇩
体で覚えたしなやかな
踏ん張りが
一生モノの
「心の自己コントロール力」へ
非認知能力のなかでも、社会を生き抜くために特に重要なのが「感情をコントロールする力」や「辛抱する力」、非認知能力のカテゴリーで言うところの『自己制御・自己コントロール』、『感情調整』などです。※非認知能力のカテゴリーは提唱する機関や専門家によって異なります。わたしは早稲田大学教授、小塩真司先生の説を提唱しています。
この、心を踏ん張る力は、精神力だけで育てようとしても決して上手くいきません。わたしは、まずは「身体の踏ん張り」から子どもたちに働きかけていきます。
たとえば、縄跳びで「あと10回で目標達成だけど、足がだるいな、きついな」と感じる瞬間。あるいは、水泳で「水に潜るのがちょっと怖いな」と感じる瞬間。 子どもたちは、自分の身体から発せられる「きつい」「怖い」という信号を受け止めながらも、「よし、もう一回やってみよう」と、自分の意志で身体を動かします。
この「身体の『きつい』を、自分の意志でコントロールして乗り越えた」という体験こそが、脳の「前頭葉」という、感情や行動をコントロールする部分を猛烈に刺激します。
「がんばり体操で、目標の回数まで踏ん張れた!」 「クロールが泳げるようになるまで、あきらめずに練習できた!」
こうして身体で覚えた「しなやかな踏ん張り」は、やがて心が壁にぶつかったとき、たとえば「思い通りにいかなくてイライラするけれど、ちょっと落ち着こう」「難しい問題だけど、あきらめずに考えてみよう」という、心の自己コントロール力へと見事に化けていくのです。
「動く身体」が「折れない自信(自己効力感)」を育む
簡単に物事を諦めてしまう子と、粘り強く取り組める子の違いはどこにあるのでしょうか。それは、「自分ならきっとできる(自己効力感)」という感覚を、どれだけ心の奥深にもっているかということです。
言葉によるコントロールで「あなたならできるよ」と100回褒めるよりも、子どもにとって強力なのは、「自分の身体が、自分の思った通りに動いた!」という確かな手応えです。
- 投げたボールが、狙ったところに届いた
- 自分の足で、あの高い段差を飛び越えられた
- 縄跳びが、安定して跳べるようになった
これらは、子どもにとって「自分の力で世界に働きかけ、変えることができた」という強烈な成功体験になります。
身体を通じて「できた!」を積み重ねた子どもたちは、「自分は大丈夫」「やればできる」という折れない自信を内側に宿します。この良い循環が巡り出すからこそ、やる気が溢れ、簡単には諦めない粘り強さが育ちます。こうした体験を積み重ね、結果的に自ら目標を定めてやり抜く力『グリット』を獲得していくのです。
順番通りに、一歩ずつ
根っこ(愛着)の安心感をもとに、ステップ②の「身体感覚」をとことん耕すこと。それが、ステップ③の「非認知能力(しなやかな樹心)」を太く育てるための確実な方法です。これは、一見遠そうに見えて、実は多くのお子さんたちにとって最も早くて、確かな方法なのです。
「うちの子、心が弱くて…」と心配になったときは、心の特訓をするのではなく、まずは「いっしょに身体を動かして、心地よさを味わうこと」から始めてみませんか?
サポートで実践していること——コグトレ・ビジョントレーニング
水澤のサポートでは、教員時代の経験をもとに、お子さまの状態をつぶさにアセスメント。一人ひとりに最適な直接的アプローチ、専門的なメソッドを取り入れてお子さまの身体感覚を引き上げています。
- コグトレ(認知作業トレーニング)
- ビジョントレーニング(眼と手の協応)
- 体幹トレーニング(運動)
- スモールステップでの「できた!」の積み重ね
これらのサポートを通じて、お子さま方の可能性を最大限に引き出すお手伝いをしています。
「みらいの樹」シリーズ——記事一覧
- part1「登校しぶりの本当の正体・3つのポイント」
- part2「愛着が子どもの根っこを作る・基本的自尊感情」
- part3「言語力は思考力——言葉の力を育てるとその先に何が待つか」
- part4「非認知能力が芯となり、認知能力という年輪を育てる」
- part5「じっと座れない・手先が不器用・すぐ諦めるの本当の理由」
- part6「体が整うと、なぜ心が強くなる?『身体感覚』が『非認知能力』に化ける瞬間(本記事)
まずは「身体のワクワク」から✨
身体を耕すことこそが、子どもの
しなやかな樹心(非認知能力)を太く育てる
最も確かな近道です。
まずは気軽にLINEからご相談ください。
お子さまの状態を丁寧にアセスメントした上で、必要なサポートをご提案します。

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