今日の1冊 Vol⑩「運命の子」トリソミー【完全版】 松永正訓 著

普段は圧倒的に
ビジネス書や啓発本
心理学に関する本を
読むことが多い中

今回はドキュメンタリーを
手に取ってみました。

運命の子 トリソミー 完全版 (小学館文庫 ま 26-1)www.amazon.co.jp

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きっかけはYouTube動画です。

もと大学病院の医師で
現在は開業医である
松永先生の生き方そのものに
感銘を受け

こちらの本が気になり
さっそく手に取り

ページを開いてみると
驚いたことに
あっという間に読了していました。

この本を読んで
わたしが感じたことを
率直にお伝えしていきたいと思います。

今回のキーワードは

「優性意識」です。

わたしのこの記事を
お読みくださっている方の中にも

他人には一見分からないけれども
なんらかの病気や生き辛さを抱えている方
もしくは、まさに障がいをおもちの方も
一定数いらっしゃるのではないかと拝察します。

わたしも一見したら
「普通」(好きな言葉ではないですが…。)
に見えるかもしれません。

しかし、大きな生き辛さを抱えながら
今日、この日まで生きてきました。

小児外科医である松永先生が
小児科開業後に
地域医として携わることになった
「朝陽(あさひ)くん」

当時生後7か月の
恐らく、男の子。

恐らくと表現しているのは
朝日君がもって生まれてきた
13トリソミーという
染色体の異常に伴う様々な疾患の中に

性器不全もあったからです。

後に睾丸が滞留していることが分かり
性別はついたけれども
それぐらい過酷な状況で生まれ

2011年当時は
在宅でこうした重い障がいをもつ
お子さんをケアすることが
まだ一般的ではなかった時代。

しかし、そんな中で
朝日君のお父様が

第2子である朝陽君を
初めてその腕に抱いたときに

「朝陽は朝陽だ」

と朝陽君を命そのまま
それ以外の何者でもないと
受け止めるその
お父様の在りように

わたしは深い感銘を覚えました。


わが子が
障害をもって生まれるということ
しかも、その障害を、苦しさを
取り除いてやることができないということ

親にとって
言葉にならない葛藤が
心や頭を駆け巡り
渦巻いたことだろうと拝察します。


13トリソミーの赤ちゃんは
それ以前の医療では
積極的な治療を行わない

つまり、命の期限を
自然に任された存在でした。

松永先生は医師として
心の奥に疑問を感じながらも

大学病院で小児外科医をしていた当時は
それを倫理に基づく処置だと
どこかで自分を納得させていた

しかし、13トリソミーをもちながら
敢えて果敢に共に生きる選択をした
ご両親、そのご家族に寄り添いながら

ご自身の医師としての倫理観を
再構築
されていく様子が
読みながらありありと感じられて

この本のページをめくる手を
さらに加速させられました。

繰り返しになりますが
このご両親の素晴らしさは

朝陽君を朝陽君として
まるごと受け止めている
ところだと
わたしは感じます。


朝陽君には
左耳がありません。

眼球も小さく視力もありません。

他にも見た目に分かる
お顔の様子や
多指などもおもちです。

しかし、一目見て
障がいをおもちのお子さんだと

分かる風貌をしていても
ご両親はあえてそれに

外科的処置は施さず
朝陽君を丸ごと受け止め
常に苦しくないか、辛くないかのみに
フォーカスしておられました。

もちろん、例えば
耳を形成することが
指にメスを入れることが
そのお子さんのQOL(生活の質)を
上げるのであれば

また、そのお子さんが
いずれ望むことなのであれば

外科的な処置を行うことは
紛れもないご両親の
愛情の表れだとわたしも感じます。

しかし、朝日君に
耳を形成してみたとしても

義眼を入れて
見た目をいわゆる「普通」に
近付けたとしても

朝日君のQOLには
何の変化もありません。

むしろ痛みや苦痛を伴うだけです。

ご両親は常に
声にならない朝日君の意志を丁寧に拾い

ほんのわずかな
表情とも言えないお顔の変化
手足の動きを捉えて

その想いをキャッチし
要求と思われるわずかな変化に
その都度対応しておられました。

夜中も30分~1時間おきに
痰の吸引を行い
胃ろうからの栄養補給を
一日に4~6回こなし

呼吸器のアラームが鳴れば
夜中であっても対応し

寝ずの介護を行いつつ
兄弟であるお兄ちゃんに寄り添い
家族の時間を大事にされていました。

その静かで柔らかい
また、温かな暮らしぶりに
わたしは心撃たれました。

この本が最初に刊行された時には
まだ健在だった朝陽君は

その後3歳8か月で
一足先にお空に帰ったけれども

それまでに体重は9.3キログラム
身長も90センチまでに成長し

3歳のお誕生日には
家族みんなでお風呂に入れたとの
記述もあり
どれだけ皆に愛されて
大きくなったかがうかがえます。

朝陽君が存命のときには
ご両親やお兄ちゃんとの
言葉での意思疎通は叶わなかったけれど

恐らく朝陽君は、今いる場所で
ご家族に心から感謝されているに
違いない

わたしは確信をもちました。

ありのままを
この世に生み出してくれた
両親から大事に
受け止めてもらえる


この世に生まれてきて
これ以上に幸せなことはありません。

人間である以上
完全である必要は全くない
微塵もないと
わたしは感じます。


何をして「優性」とするのか
その本質をじっくりと
考える機会をいただいた一冊でした。

こちらの本は新書だった
初版出版の2013年に
「第20回 小学館ノンフィクション大賞」
を受賞
しています。

初版の原稿に
朝陽君が亡くなる部分のエピソードと
あとがきを加えて文庫本になった物が

今回私が手に取った

『「完全版」
運命の子トリソミー』
です。

ご興味をもたれた方は
こちらの本を手に取られてみてください。⇓

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最後までお読みいただき
ありがとうございました✨

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この記事を書いた人

*フリーランス公認心理師*子育て教育カウンセラー

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