今回ご紹介させていただくのは
作家の橘玲氏と
慶應義塾大学名誉教授の安藤寿康氏
このお2人による対談形式の共著
「運は遺伝する」
運は遺伝する: 行動遺伝学が教える「成功法則」 (NHK出版新書 710) www.amazon.co.jp
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こちらの本になります。
紹介と言ってもわたしが
「ここ」と感じたところについて
ピックアップするといった
かなり主観的な内容となりますので
そこをご理解いただいた上で
お読みいただけましたら幸いです。
まずわたしが今回こちらの本の
結論としてとらえた部分はここです。
「おかれた場所で咲きなさい」
ではなく
「咲ける場所に動きなさい」
つたない読解力で恐縮ではありますが
この部分がお二人がこの本の読者に
伝えたいことを物語っていると
わたしはそのように感じました。
実はタイムリーに
わたしがレジリエンストレーナーとして
所属させていただいている
「日本ポジティブ教育協会」の
つい先日の「PEクラブ」という
トレーナーたちの勉強会で
安藤寿康先生の説に基づく
行動遺伝心理学の学説が取り上げられました。
こうしたことも踏まえ
この文中の言葉を教育に置き換えてみると
現在不登校児童生徒が35万人を超え
さらに増え続けている現状も
もしかしたらこの言葉が何かの要因を
言い当てているのかもしれないと
そのようにも感じました。
「遺伝」という
ある種の情報からヒントを得て
自分の咲かせたい花を
種からどう育てていくのか
どう育てたらより効果的に
効率的に(あまり好きではありませんが…。)
その花を咲かせることができるのか
そう伝えてくれているのだと
わたしには感じられました。
これを一言で言うと
「生物学的な違いを生かす」
ということだとわたしは解釈しました。
本の中でお二人が語られているとおり
人種的な差異、例えば
黒人の方々であれば
アスリートとしての非凡な才能をもつ
ユダヤ系・インド系の方々であれば
頭脳の明晰さが際立つなど
それぞれの人種によって
すでに大輪の花が
咲かせられる
可能性のある領域が
明確にある
ということになります。
そこに「異論」はありません。
しかしながら心に引っかかる部分が
あったことは否めませんでした。
この本の中には
わたしが拙著に書かせていただいている
「①心理学 ②認知能力 ③非認知能力」
この3つ全てが取り上げられています。
一つずつ分解してお伝えしていきます。
①「心理学」の部分でいうと
有名な「マシュマロテスト」
幼い子どもが目の前のマシュマロを食べずに
我慢できるのかというあの実験ですね💡
さらに「愛着」についても語られています。
お二人は愛着理論に懐疑的で
特に乳幼児期の子どもは親の態度を
解釈したり判断したりできないので
生育に影響を及ぼさないおっしゃられていますが
わたしは当事者なのでこれに関しては
正直違和感を拭えませんでした。
今回そこは深堀せずに次に移りますね。
精神病的な遺伝の傾向についても
この本の中で取り上げられています。
これらについては
遺伝的な要素はあるかもしれないけれども
それ以外の要素と上手く向き合えば
回避できるのではないかとの
お二人の見解が述べられていました。
また「親ガチャ」についての見解では
子どもの知能への環境的な要因は約5%で
SES(社会経済的地位)は
幸福感、反社会的行動、心身の健康などに
影響は及ぼすもののそれでも
最終的には影響は10%程度で
全体的には遺伝で説明できるとのことでした。
「親ガチャ」の影響がかなり限定的だと
おっしゃっているお二人の見解に救われる人は
一定数おられるのではないかとは感じます。
もちろん、これまでの経験上
遺伝的要素にもかなり
振り回されそうだとは思いますが…。
②「認知能力」の部分で言うと
わたしの良く知る
「認知機能強化トレーニング:コグトレ」を
開発された「宮口幸治先生」が
この本に登場します。
橘さんは宮口幸治先生と実際に
お話をされたことがあるとのことで
わたしはお二人のつながりに驚きました。
行動遺伝学で言いうと「堅実性」の遺伝率は
なんと50%なのだそうです。
わたしはこれにもちょっと驚きました。
まあ、遺伝に限らず堅実性は
環境的にも周囲からの影響を
受けそうだとは考えられますが
いずれにせよ高いパーセンテージです。
さらに遺伝的に高い割合を占めるのは
脳の中で知能をつかさどる部分である
「前頭葉」でこちらはなんと9割が
遺伝だと本の中では述べられていました。
こうしたことから、お二人によると
非認知能力を社会に知らしめた
ヘックマンが発見した
就学前の徹底教育の効果も
「遺伝」で説明できるとの驚きの見解でした。
また、宮口先生が携わってきた
少年院で矯正教育を受ける少年少女たちの多くは
遺伝的に「頑張れない少年たち」という
フレーズで語られることになり
その社会的・教育的なシステムの構築は
困難を極めるとのことでした。
これには残念ながら身もふたもないなと
感じざるを得ませんでした。
③「非認知能力」の部分では
わたしが拙著で書かせていただいている
「GRIT(グリット)やり抜く力」について
これまでの「非認知能力」
押しの方々の説で言うと
知能のハンディキャップがあったとしても
頑張る力を鍛えれば挽回できる
という主張には希望はあるものの
②の「認知機能」でもご説明したように
実際は遺伝的、生得的に
「どうしても頑張れない子どもたち」
がいるという現実が突き付けられている。
実際には知識社会では圧倒的に
知能の高い人がアドバンテージをもっている。
しかし、実際にはこれは「不都合」なので
「非認知能力」という主張が
現れたのではないかと述べられています。
う~ん。だれしも「能力(知能)」という
変わらない壁にぶち当たって
進めないという説は
信じたくないのではないでしょうか??
救われるのは以下の安藤教授のご発言です。
どのような人間であっても一般的な能力だけで生きているのではない、ということです。自分が生まれ落ちた特定の環境のなかから、自分のできること、得意なことを見つけ出す。そうやって自分のニッチをつくり上げ、困難を乗り越えながら生きていく。こういうことは、何も特別な才能に溢れた人だけがやっているのではなく、分野は違ったとしても、たいていの人はそのようにして生きているのではないでしょうか。
「運は遺伝する 行動遺伝学が教える『成功法則』」
安藤寿康教授のご発言
橘玲さんもこのようにおっしゃられています。
あまり指摘されませんが、知識社会においても、IQが高ければ高いほど成功して幸福になれるわけではありません。(中略)美術であれ音楽であれ、あるいはiPhoneのような電子機器の開発でも、クリエイティヴな作品というのは多くの大衆から受け入れられてはじめて「成功」と見なされます。
「運は遺伝する 行動遺伝学が教える『成功法則』」
橘玲氏のご発言
正直、これらのお二人の対談での内容を
すべて「そうそう、その通り!」と
手放しで言えないまでも
いくつかの点で教育の変革にかかわる
ヒントが見える部分があります。
それは、先日のPEクラブでの
それぞれのトレーナーの方々や
講師の先生のご発言からも
信憑性を増しました。
具体的には今の
「金太郎あめ」を作ろう
「平均的」な教育をして
「平均的」な人間を育てよう
(文科省はそうは言っていませんが
実際現場ではそうならざるを得なく
なっているのは皆さまご承知のとおりです。)
を大きく改めて
一人ひとりの
特性や強み個性
その違いに対応できる
公教育に学校に
していこう!!!
学校のその後
その先の社会にも
それぞれの個性や強みが
認められる
花開ける場を
みんなでつくっていこう!
このように学校を社会を
変革するすることができたら
だれもが「自己」を
実現できるのではないかと
そのように感じました。
学校に子どもたちを合わせるのではなく
学校が子どもたちの個性や強みに
対応できるようにしていく。
社会に出ても一人ひとり
互いにその良さや個性を
認め合ってそれぞれが共生していける。
わたしはこのような
未来を望んでいます。
きれいごとでしょうか??
学校現場でもこうしたことを
批判的に受け止められてしまうことは
往々にしてありました。
でも、わたしは
諦めたくは
ないのです。
だれかが口にすることで
現実化する可能性があるならば
わたしが率先して言っていきます。
冒頭でお伝えした
「おかれた場所で咲きなさい」
ではなく
「咲ける場所に動きなさい」
この言葉をさらに本の中の言葉で置き換えると
個人のもつ遺伝的要素が発揮されたときに、その人自身が幸福を感じられ、なおかつその状態を安定的に維持できる社会こそ、行動遺伝学的に理想的な社会ということです。
「運は遺伝する 行動遺伝学が教える『成功法則』」
安藤寿康教授のご発言
つまり、「遺伝」という
DNAという自分を形成する
大事な一つの指標を用いて
まずは自分を良く理解した上で
どんな花を咲かせると
幸福を感じることができるのか
それに合わせて人生の地図を描いても
いいのですよ、と
もちろん、そこには
制度の改正という
超えなければいけない山もありますが…。
しかし、わたしはこの本から
このようわたしなりに捉えてみました。
いかがだったでしょうか?
もしご興味をおもちになった方は
こちらを手に取ってみてください。
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最後までお読みいただき
ありがとうございました✨
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